1ほとんど老いないチョウ――ヘリコニウスは仲間の最大25倍も長生きする
科学のしくみ
重要
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2026年6月16日、科学誌「Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)」に、イギリスのブリストル大学などの研究チームが発表した研究で、中南米にすむ「ヘリコニウス」というチョウの仲間が、近い親せきのチョウにくらべて約3倍、極端な例では最大25倍も長生きすることがわかりました。最も長生きする種「ヘリコニウス・ヒューイットソニ」は最大348日(約11か月)も生きるのに対し、近縁の「ディオネ・ユノ」はわずか14日。さらに一部の種(ヘリコニウス・ヘカレ)は、年をとっても体の力がほとんど衰えない=「ほとんど老いない」ことも確かめられました。
ワンポイントふつう、チョウの成虫(せいちゅう=大人のチョウ)の寿命は数週間ほど。でもヘリコニウスは1年近く生き、しかも年をとっても元気なまま。その秘密のひとつは「花粉(かふん)を食べること」。同じ仲間でも、食べ方や体のしくみが少しちがうだけで、寿命がこんなに変わるのです。
🔬 科学のしくみ (研究・発見の仕組み)
多くのチョウは花の蜜(みつ=糖分)だけを吸いますが、ヘリコニウスは花粉も食べます。花粉にはタンパク質やアミノ酸(体をつくる栄養)が含まれ、これが体の細胞の修復(こわれた部分を直すこと)を助け、長生きにつながると考えられます。ただし研究では、花粉を食べさせなかったヘリコニウスでも近縁種より長生きしたため、「えさ」だけでなく、進化によって体そのものが長寿向きに変化したこともわかりました。老化の度合いは、チョウが枝などに「つかまる力(grip strength)」を測って調べ、ヘカレでは加齢(年をとること)による衰えが見られませんでした。
🌐 くらし・未来 (未来の社会・技術への意味)
「なぜ生き物は老いるのか」「どうすれば健康に長生きできるのか」は、人間の医学でも大きなテーマです。ほとんど老いない生き物のしくみを調べることは、老化や病気を理解するヒントになります。生き物の多様性(いろいろな種類がいること)の中には、人類の健康に役立つ知恵がまだたくさん隠れているのかもしれません。
2巨大火山イエローストーンの謎――マグマは「地下の風」が運んでいた
科学のしくみ
重要
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2026年6月、世界的な科学誌「Science(サイエンス)」に、中国科学院(ちゅうごくかがくいん)などの研究チームが、アメリカの巨大火山「イエローストーン」のマグマ(地下でとけた高温の岩)がどこから来るのかについて、新しい説を発表しました。これまでは「地球の深部(核に近い深いところ)から熱い柱『プルーム』が立ちのぼってマグマを生む」と考えられてきました。しかし新しい研究は、コンピューターで地下を立体的に再現し、もっと浅いところを横向きに流れる「マントルの風(mantle wind)」が熱い岩を運び、地表に近い場所でマグマを作っていると示しました。
ワンポイントイエローストーンは、噴火(ふんか)すれば地球規模の影響が出るといわれる「超巨大火山(スーパーボルケーノ)」。その火の元(マグマ)が「深くからまっすぐ上がってくる」のではなく、「浅いところを横に流れる地下の風が運んでいる」かもしれない――長年の常識をくつがえす発見です。
🔬 科学のしくみ (研究・発見の仕組み)
地球の表面はプレート(巨大な岩の板)でできていて、昔「ファラロンプレート」という板が北米の下に沈み込みました。その沈み込みが、地下の柔らかい層(アセノスフェア)を東向きに流れさせる「マントルの風」を生みます。この東向きの流れと、西側で軽い岩が上昇しようとする力がせめぎ合うと、岩がとけてマグマができます(減圧融解=圧力が下がって岩がとける現象)。さらに、その力が大陸の岩盤を引き裂くようにして、マグマが上がりやすい「南西に傾いた通り道」を作っていると説明されています。
🌐 くらし・未来 (未来の社会・技術への意味)
巨大火山のしくみを正しく知ることは、噴火のリスクを評価し、防災(災害にそなえること)に役立ちます。今回のようにコンピューターで地球内部を立体的に再現する技術が進めば、地震や火山活動を予測する精度も少しずつ高まります。地球は今も生きて動いていて、私たちの足の下では想像以上にダイナミックなことが起きています。
3ティラノサウルスは「40年かけて」大人になっていた――17体の化石から判明
科学のしくみ
通常
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2026年6月22日、だれでも無料で読める科学誌「PeerJ(ピアジェイ)」に、アメリカのオクラホマ州立大学などの研究チームが、肉食恐竜の王「ティラノサウルス・レックス(T. レックス)」の成長について新しい研究を発表しました。17体のティラノサウルスの化石の足の骨を調べたところ、骨の中には木の年輪(ねんりん)のような「成長線(せいちょうせん)」が残っていて、特別な光をあてると、これまで見落とされていた線まで数えられました。その結果、ティラノサウルスは体重約8トン(アフリカゾウ約1.5頭分)の大人になるまでに、これまで考えられていた約25年ではなく、なんと約40年もかかっていたとわかりました。
ワンポイントティラノサウルスは「すぐに巨大になる恐竜」と思われていましたが、実は人間と同じくらい長い時間をかけて、ゆっくり成長していたのです。骨に残った「年輪」を読むと、何千万年も前に生きた恐竜が何歳まで育ったのかまでわかる――化石は、過去からとどいた手紙のようなものです。
🔬 科学のしくみ (研究・発見の仕組み)
骨の成長線は、生き物が育つ過程で1年ごとにできる縞(しま)模様です。研究チームは足の骨をうすく切り、特別な光で観察して、これまで見えなかった成長線まで数え、さらに新しい統計(とうけい=データを数学で分析する方法)を使いました。これは過去最大級のデータ量による恐竜の成長研究です。研究では、「ジェーン」「ピーティ」と呼ばれる有名な化石が、実は子どものティラノサウルスではなく、別の種類(ナノティラヌス)かもしれない、という指摘も出ました。
🌐 くらし・未来 (未来の社会・技術への意味)
「恐竜がどのくらいの速さで育ったか」を知ることは、恐竜がどんな暮らしをし、どう進化したのかを理解する手がかりになります。古い化石でも、新しい技術と分析方法を組み合わせれば、これまで分からなかった事実が見えてきます。科学は「昔の発見」を何度でも見直し、よりよい答えに近づいていく学問です。
4はやぶさ2、7月5日に小惑星トリフネへ超接近――歴史的なフライバイへ
科学のしくみ
通常
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JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」が2026年7月5日、小惑星「トリフネ(正式名称:2001 CC21)」のすぐそばを高速で通り過ぎながら観測する「フライバイ」を行います。最接近時の距離は小惑星の中心からわずか約1〜10km、速度は秒速約5.25km(時速約1万9,000km)。これはこのクラスの探査機としては「史上もっとも近い小惑星接近のひとつ」とされます。トリフネは直径約450mの岩石質(S型)の小惑星。「はやぶさ2」は本来の目的(小惑星リュウグウからのサンプル回収、2020年に完了)を終えたあとの「拡張ミッション」として、次の目的地(小惑星1998 KY26、2031年到着予定)へ向かう途中でこの観測を行います。
ワンポイント「はやぶさ2」は2020年に小惑星のかけらを地球に持ち帰った日本の探査機です。その後も宇宙を旅し続けていて、今度は別の小惑星のすぐ横を通り過ぎます。7月5日、宇宙のかなたで日本の探査機が歴史的な瞬間を迎えます。
🔬 科学のしくみ (研究・発見の仕組み)
フライバイ(通過観測)は、探査機が減速して小惑星のまわりを回るのではなく、高速で横を通り過ぎながら観測する方法です。今回の速さ(秒速5.25km)と近さ(約1km)はとても難しく、わずかな時間に、向きを固定したカメラで大量のデータを記録します。トリフネは「Sq型」というありふれた石質の小惑星で、得られるデータは小惑星の組成(なにでできているか)の解析や、高精度で探査機を導く航法(こうほう=進む道を正確に制御する技術)の実証に使われます。
🌐 くらし・未来 (未来の社会・技術への意味)
「はやぶさ2」の拡張ミッションは、1機の探査機を複数の目的に使いまわす、むだの少ない宇宙開発の好例です。小惑星を正確に観測する技術は、将来「地球に近づく小惑星の動きをつかむ」惑星防衛(地球を小惑星の衝突から守る取り組み)にもつながります。日本の探査機が世界の最前線で挑戦を続けていることは、宇宙にあこがれる子どもたちへのはげみにもなります。